医療
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遺作版画よりみた末期癌患者の心理分析
松岡 寿夫白井 幸子村上 国男
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キーワード: 末期癌, 心理分析, 癌宣告
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1984 年 38 巻 8 号 p. 830-833

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抄録
患者は癌を宣告された43才の男子で, 胃癌再発後, 約2年間に50枚の版画を製作した. 主治医に版画による心理分析を依頼し, 1981年6月死亡した.
遺作版画は色彩とイメージにより4期に分けることが出来た. I期は背景は明るい青色で, 抽象化されたものが描かれている. 能動的に力強くはあるが, 病気に対する“怒り”をひめている. II期は背景は灰色で, 都市像, 自動車, 人物, かげろうなどが描かれている.意識的, 現実的ではあるが“否認”をひめている. III期は背景は濃紺色で, 目立つ色はピンク色, 白色で, 人物, 月, 太陽, 鳥などが描かれている. “抑うつ”傾向を示す. IV期は背景は黒色で, 緑色, ピンク色が多用され, 羽毛状のものが舞い, 生命線, 鳥, 太陽などが描かれている. 抑うつ的な気持の中にも, 安らかに死を“受容”して, 旅立つたものと思う
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© 一般社団法人国立医療学会
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