1986 年 40 巻 10 号 p. 947-950
50才男子, 陰茎根部周辺の馬蹄型皮下硬結. 落痛(-), 発熱(-), 発赤(-), 排尿痛(-). 非常に硬い硬結で, これは両側の陰嚢内容(睾丸, 副睾丸, 精索など)と連絡していない.
本人は性病を否定している. なお末梢血の好酸球増多を軽度(6%)に認めたときがある. この硬結は生検後数週には著明な縮小を示し, 更に硬結索状物が会陰部をとおり, 肛門へと連絡するような所見を示したが, この索状物も数日後には消失した. 病理組織学的には著明な好酸球浸潤を示す肉芽腫であり, 特異な所見として大型の多核巨細胞が著明に参加していることである. ごく小部分には好酸性にそまる壊死巣を示すが, 結核結節などとは全く異なる組織像である. 肉芽腫には少数の脂肪空隙が散在する. 恐らく本症例と同様のものと思われる症例が大阪日赤より数例, 学会報告されていて, その表題は硬化性脂肪肉芽腫という病名が用いられている.