医療
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ファロー四徴症に併発した脳膿瘍の1例
―CT誘導による定位脳手術による治療―
甲州 啓二広田 茂須賀 俊博園部 真高橋 慎一郎福田 守邦
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1986 年 40 巻 12 号 p. 1142-1146

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抄録
脳膿瘍の1例を報告する. 患者は, 5才の男児で, 生後4ヵ月の時にフアロー四徴症と診断され, 9ヵ月の時, 左側に, Blalock-Taussig手術を受けた. 更に, 2才7ヵ月の時に, 右側にも同じ姑息手術を受けた. 5才になり, 左顔面, 左上肢にけいれんが出現した. 脳塞栓を疑い, 抗けいれん剤の投与にて経過をみていたところ, 2週後, 発熱, 頭痛, 嘔吐が見られるようになつた. 頭部CTスキヤンを施行すると, 右大脳半球に, 占拠性病変がみられ, 造影剤投与にてリング状の増強効果がみられた. 以上の結果から我々は, 脳膿瘍と診断した. 抗生物質投与を試みたが, 膿瘍腔の拡大が進行したため, 外科的治療を施行した. CT誘導による定位脳手術にて膿瘍内容の穿刺を行つた. 全身用CT (TCT-70)と, Leksell型の装置を使用した. 手術は, 全身麻酔下に行つた. 2個の膿瘍腔を穿刺, 排膿した. 術後のCT上では, マスサインは改善していた. 細菌培養の結果は, Peptostreptococcusが同定された. CT誘導による定位脳手術は, 正確, 簡単且つ安全な手段であり, 今後広く用いられるものと思われる.
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© 一般社団法人国立医療学会
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