抄録
1930年代から染毛剤との関連を示唆する造血障害, 特に再生不良性貧血(再不貧)の症例が報告きれているが, いまだに報告例は少ない. しかし血液専門医は, 染毛剤の関与が疑われる血液障害症例を少なからず経験しており, 従来の報告例は氷山の一角にすぎないと考えている.しかし否定的意見もあり, 染毛剤と造血障害, 特に再不貧との関連はいまだに明らかでない.
最近われわれは既往疾患や常用薬剤の使用歴がなく,染毛剤使用中に発症した再不貧の2例を経験したので報告する.
症例1 61才, 主婦. 5年間染毛剤使用後に再不貧発症.
症例2 50才, 主婦. 2年間染毛剤使用後に再不貧発症.
両例共染毛剤の中止,副腎皮質ステロイドのセミ・パルス療法および蛋白同化ステロイドにより貧血の改善を認めた.