医療
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精神分裂病者の例示化活動
松林 武之円山 一俊新田 晴久山下 昇三西沼 啓次広瀬 棟彦吉田 功伊藤 洋子小川 勇子
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1986 年 40 巻 4 号 p. 319-324

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抄録
我々は, 生活の過程でしばしば抽象的で不明瞭な問題に遭遇する. その際, 問題からの断片的な情報を統合し, 文脈や適切な事例を創造して, 全体のつじつまがあうようにその内容を理解する. 今回, 健康者と分裂病者で文脈や事例の創造が異なるか否かを, Wasonの課題, 小切手の課題, さらに不明瞭文章の解釈課題を通して比較し, それぞれの知識の特性や状態について検討した.
実験の結果は, 健康者の知識が文脈依存的であり, 現実的で経験的な場面や状況と強く結びついた事例やモデルでもつて思考することを示していた. 一方, 分裂病者はその推理能力が貧弱であること, 文脈を把握し, 適切な事例の創造に失敗することを示した. このことは, 予期や期待を形成することができない. つまり知識が構造的な単位のなかに体制化されていないことを示唆している.
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© 一般社団法人国立医療学会
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