抄録
バイパス術において, グラフトの外的圧迫による閉塞の危険を避けるために, 従来行われてきた皮下にグラフトの走行を置く術式ではなく, 腋窩動脈吻合後にグラフトを第一肋間腔より胸腔内を通し, 横隔膜を穿通後, 腹部では筋層下, 腹膜上のルートを通り, そけい靱帯下をへて大腿動脈を吻合する, 胸腔内, 腹膜上(intrapleural, preperitoneal route)のaxillofemoralバイパス術式を考案した. 現在まで, 動脈硬化性病変による大動脈, 腸骨動脈領域の閉塞, 狭窄性病変を有する7症例に本術式を応用し, 最長17ヵ月から最短2ヵ月, 平均10ヵ月の短い観察期間ではあるが, 全例開存している結果を得ている. 本術式の場合, グラフトが全く体表から触知されず, 従つて外部より圧迫される危険はほとんどなく, 就眠時の体位その他患者の日常生活の制限をほとんど強いる必要がなく試みてよい術式と考える.