抄録
家族性の肥大型閉塞型心筋症のうち, 突然死の多発する一家系を対象にして臨床的研究を行つた. 胸部X線写真, 心電図, 心エコー図, 心臓カテーテル検査により, それぞれ特有の所見が得られた. そのうちスクリーニングに特に重要と考えられる心電図所見について, 拡張型心筋症と対比して肥大型閉塞型心筋症の特徴をまとめた. (1) II IIIaVFのST低下, (2) V5~6のST低下及び高いR波, (3) V1~2の高いR波及び脚ブロツクの合併, (4) 僧帽性P波, などである. これは他の型の心筋症とは異なり, 比較的容易に疾患を疑う根拠となり得る. 成人症例は冠動脈硬化と誤られて治療されていることが多く, 冠動脈造影も大切な検査である. 薬物治療が主体ではあるが, 適切な治療で突然死をより少なくするためには若年男性の運動は避けた方が安全である. 遺伝性であること, 自覚症状に乏しいことなどから, 患者家族と密接な連絡をとることが不可欠である.