抄録
肝癌に対する肝動脈塞栓療法(transcatheter arterial embolization therapy:TAE)の著効例の特徴を明らかにするために, TAE後, 反復血管造影にて効果判定できた30例について検討した.
30例中5例に血管造影にて腫瘍陰影の消失を認め, 1年以上(平均観察期間2年8ヵ月)経過した昭和59年10月現在も, 腫瘍陰影の出現を認めず肝癌組織の完全壊死と考えられる著効例と判定した. 5例中4例が初回TAEで腫瘍陰影消失を認めた. また, 5例中3例が腫瘍径3cm以下単発例で3例とも右後下区域末梢に位置していた. なお, 30例の初回TAE効果は24例(80%)に腫瘍縮小効果を認めた. また, 追加TAEにて縮小効果を認めた例はすべて初回TAEでも縮小効果を認めており, こうした例に対する追加TAEは意義があると思われた.
TAEは肝癌治療に有用であるが, 特に腫瘍径3cm以下の単発例で右葉辺縁に位置し, 初回TAEにて著効を示す例は長期生存が可能でTAEの積極的適応があると思われた.