医療
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肝細胞癌に対する肝動脈塞栓療法
―5年間の治療成績とその問題点―
橋本 勉森本 耕治崔 秀美松井 清明宮本 岳北谷 孝嗣徳永 仰宮田 傲明原 一夫
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1987 年 41 巻 1 号 p. 26-30

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抄録
昭和55年より昭和60年6月までに, 国立大阪病院放射線科において肝癌の検索を目的として221例に血管造影を施行し, 139例(63%)が肝癌と診断され, 73例に延べ87回の肝動脈塞栓療法を施行した. このうち, 12例は塞栓療法後肝切除を行い, 2例は肝切除後の再発に対して塞栓療法を施行した. 肝動脈塞栓療法のみを施行した59例の累積生存率は, 1年生存率45%, 2年生存率21%であつた. 1ヵ月未満の早期死亡は, 肝不全3例, 急性腎不全, 消化管出血, 脳幹出血各1例の6例(10. 2%), 1ヵ月以上3ヵ月未満の死亡は10例(16. 9%)であつた. 肝切除を行つた12例のうち, 4例が塞栓療法併用肝切除に関係して6ヵ月以内に死亡しており, 硬変合併肝癌では肝動脈塞栓療法を併用することによる手術適応の拡大が困難なことを示唆している. 肝癌の治癒切除の基準を満たさない症例では, 肝動脈塞栓療法を第一選択とすべきである.
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© 一般社団法人国立医療学会
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