医療
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放射線全身被曝による半致死線量(LD50/60)の推定
―広島の爆心地域調査から―
大北 威
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1987 年 41 巻 6 号 p. 499-505

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抄録
広島・長崎ではおびただしい人々が原子爆弾の傷害因子である熱線, 爆風, 放射線の複合作用の犠牲となつた. このなかから放射線被曝を主原因として亡くなつた人々を選び出せれば人体に対する半致死線量(LD50)推定の貴重な資料となろう. このような作業仮説に基づき, 広島の爆心地から500m以遠1,300m以内の木造家屋内で被爆した3,215名を復元調査プアイルから選び, 被爆後60日間の経過を追跡した. 被爆翌日の生存者は2,130名で, そのうち1,640名が観察期間中に死亡した. 被爆距離別死亡率から50%死亡率を示した距離を求めると, 爆心地から903±8mであつた. 年令別にみると, 50才台以上の年令層では放射線感受性が高く, 性別では40才台以下の女性で感受性が低い傾向がみられた. 原爆放射線量の推定については従来から用いられてきたT65Dはその見直しをせまられ, 日米共同して目下新線量DS86確定の作業が進められており, 1987年内にはその値が公表きれる予定ときく. したがつて, 上記の被爆距離からLD50/60を換算することは今しばらく待たねばならない.
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