抄録
すくみ足を主症状とし, levodopa療法に抵抗し著しい歩行障害を呈したパーキンソニズムに2本杖歩行を試みた. 患者は71才男性で, 薬物療法にてrigidityの消失後もすくみ足の改善が認められず独歩不能であつたが, 一方において障害物を越えたり階段の昇降時には歩行が改善する奇異な現象であるkinésie paradoxaleが観察された. そこで患者の両手に杖をもたせ, 交互につかせ, 歩かせたところ通常の杖歩行に比しても有意の歩行時間の短縮が認められた. kinésie paradoxaleはリハビリテーシヨン部門でパーキンソニズムの歩行訓練に広く利用されているが, 2本杖歩行はこのkinésie paradoxaleを利用した実用的な歩行方法と考えられ報告した.