医療
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有機酸代謝異常症のハイリスク症例の認識基準
―3年間のスクリーニング経験から―
柿沼 宏明山本 重則西牟田 敏之森 和夫
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1989 年 43 巻 2 号 p. 207-211

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抄録
有機酸代謝異常症のスクリーニングを効率よく行うために, 過去3年間に尿中有機酸分析を依頼された症例と有機酸代謝異常症と診断した症例の臨床像, 検査所見を検討した. 尿中有機酸分析を依頼された症例は550例で, 有機酸代謝異常症と診断した症例は24例であつた.
スクリーニングの依頼理由としては, 精神運動発達遅延, 痙攣, 筋緊張低下が多かつたが, 有機酸代謝異常症としての診断的有用度はそれぞれ2.5%, 3.3%, 2.9%と低かつた. 一方, 高乳酸血症, 代謝性アシドーシス, 呼吸障害, 高アンモニア血症, の診断的有用度はそれぞれ, 48.8%, 38.5%, 35.7%, 28.6%と高かつた.
グリセロールキナーゼ欠乏症のスクリーニングには, 精神運動発達遅延を合併する筋ジストロフイー症がハイリスク症例と思われた. また高ロイシン血症を合併レ無症状で診断されたマルチプルカルボキシラーゼ欠乏症とライ症候群様症状で死亡した同胞をもち, 同じく無症状で診断されたジカルボン酸尿症の経験から, 同様の病歴をもつ症例では, 臨床症状の有無にかかわらず積極的にスクリーニングの対象にするべきであると思われた.
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© 一般社団法人国立医療学会
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