医療
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両側側頭葉損傷による環境音失認を伴う純粋語聾の1例
藤井 俊勝大沼 歩木村 格笹生 俊一深津 玲子
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キーワード: 環境音失認, 純粋語聾
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1989 年 43 巻 2 号 p. 212-215

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抄録

症例は, 65才, 女性, 右利き. 昭和61年9月, 右顔面のしびれと構音障害が出現するも1ヵ月で消失した. 今回, 昭和62年4月右側頭葉の脳出血により左半身の知覚障害および純粋語聾, 環境音失認が出現した. 脳CT上, 右側頭葉に高収域, 左側頭葉に低吸収域を認めた. 神経心理学的には, 口頭表出言語, 読字, 呼称はいずれも可能だが, 聴覚的言語理解は, 著明に障害され, 復唱・書取は不能で, 環境音の認知も障害されていた. その他の失行・失認は認められなかつた. 聴覚的検査では, 純音聴力に改善は認めるものの障害を認め, また聴性脳幹反応でI~V間隔の軽度延長を認めた. 中間反応, 頭頂緩反応は正常であつた. 当症例の純粋語聾および環境音失認は, はじめに左第一次聴覚野に病変があり, その後右第一次聴覚野もしくは第一次から第二次聴覚野にかけて病変が加わつたために, 言語性および非言語性刺激の入力が障害され, 出現したものと考えられる.

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