抄録
昭和60年1月以降の2年6ヵ月に, 国立京都病院で経験した1cm以下の大腸癌6例を報告した. 平均年令は60.3才, 男性5例・女性1例で, 6例中1例のみ有症状(下血)だつた. 同時に存在した病変は, 6例中4例に大腸ポリープ, 2例に大腸癌, 2例に胃癌を認めた. 腫瘍形態は, Type Iが3例, Type IIa+IIcが3例であつた. 注腸検査では, 1例のみ悪性と診断できた. 内視鏡所見は, Type IIa+IIcの3例は悪性と診断したが, Type Iの3例はいずれも良性ポリープとしてポリペクトミーされ, 組織診断で悪性所見を得たものであつた. 1cm以下でも隆起病変はポリペクトミーし, 全体を組織診断することが重要とおもわれた. 壁深達度は, Type IIa+IIcの3例中2例がpm, smで深部浸潤傾向を認めたのに対し, Type Iの3例はm癌であり, 早期大腸癌の発育形態は, 2通りのtypeが存在するとおもわれた.