1989 年 43 巻 5 号 p. 597-602
ステロイドの重篤副作用の一つに精神障害が挙げられている. その状態像として, 従来感情障害が強調されてきたが, 最近では多様で非定型的であるといわれている. 著者らはステロイドによる急性精神病様状態を3例経験したので報告する.
症例1は70才の男性. 肺気腫及び珪肺でdexamethasoneが使われており, 軽躁状態を呈した. 症例2は32才の女性. SLEでdexamethasoneが使われており, 急性幻覚妄想状態を呈した. 症例3は54才の男性. 気管支喘息の重積発作を来し, hydrocortisoneとprednisoloneの併用により急性幻覚妄想状態を呈した.
身体症状により, ステロイドを症例1と2は置換し漸減, 症例3は漸減・中断し, それぞれ抗精神病薬を少量投与したところ, 7日から1ヵ月で精神症状は消退した.