抄録
先天性無虹彩症の一家系を経験し, そのうちの1例に白内障手術を行つた.
症例は69才の男性で, 両眼視力障害を訴えて受診した. 家族歴では娘, 孫娘に無虹彩症を認め, 常染色体優性遺伝とおもわれた.
視力は両眼とも0.01(矯正不能)であり, 無虹彩症, 角膜混濁, 白内障, 小角膜を認め, 眼底の詳細は観察不能であつた. 両眼白内障に対して嚢外摘出術を施行し, 両眼とも術後視力0.1(矯正)を得た.
無虹彩症の白内障術式を決定するにあたつては, 年令, 緑内障の有無, チン氏帯の状態を考慮すべきであり, 術後, 硝子体が隅角を閉塞するのを防ぐため, 水晶体後嚢を残すことが肝要であると考えられた.