抄録
直腸癌の既往を有するも, X線学的所見が大脳鎌髄膜腫に類似したため, 術前診断を髄膜腫と誤つた, 転移性脳腫瘍の1例を経験した. 患者は56才女性, 1年半前他院にて直腸癌の手術を受けた. 左下肢の運動障害が出現し, 頭部CTにて, 右頭頂部に大脳鎌に接し一部左側にも進展する腫瘍陰影を認めた. 脳血管撮影にて, 右外頸動脈系の中硬膜動脈からの腫瘍への流入と髄膜腫特有のsun burst様所見を得たため, 大脳鎌髄膜腫と診断した. 右頭頂開頭にて, 腫瘍摘出術と外減圧を施行した. 腫瘍は, 大脳鎌に強く付着しており, 術中所見でもやはり髄膜腫とおもわれたが, 病理組織診断では腺癌であり, 直腸癌の硬膜(大脳鎌)転移と判明し, 後に剖検所見により裏付けられた. 文献上このような症例は極めてまれとおもわれた.