1990 年 44 巻 4 号 p. 412-415
今回われわれは腸管嚢腫様気腫と胃多発癌の併発症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告した.
症例: 74才, 女性, 主訴は体重減少, 心窩部不快感, 6ヵ月間に8kgの体重減少を認め, さらに心窩部不快感が出現したので, 当院消化器内科受診し, 精査の結果, 胃多発癌(前庭部大変Borrmann II型, 体中小弯 II-C)の診断で当科紹介され胃亜全摘術施行. 術中腹腔内精査で上行結腸に多数の緊満した腫瘤を触知し, 術中内視鏡及び術前の腹部単純撮影の再検討にて大腸腸管嚢腫様気腫と診断し, 上行結腸部分切除術を施行した. 自験例は術中に偶然発見された例であるが, 術前の腹部単純撮影での多数のブドウの房状のガス透亮像は, 本症診断の重要な手掛りとなるので術前の注意深い観察が必要であつたとおもわれた.