医療
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肺アスペルギルス症手術例の検討
小松 彦太郎片山 透村上 国男相良 勇三林 孝二倉島 篤行佐藤 紘二蛇沢 晶毛利 昌史米田 良蔵
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1991 年 45 巻 12 号 p. 1138-1142

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抄録
1978年から1990年までに当院で切除した肺アスペルギルス症は34例である. この期間に肺アスペルギルス症と診断された症例は622例で, 切除率は5.8%である. 切除した理由の多くは血痰と喀血である. 既往歴では肺結核が26例と最も多い. 結核発症から肺アスペルギルス症発症までの期間は5年以内が12例と最も多いが15年以上も5例に見られた. 術前の胸部写真でFungus ballは31例(86%)に見られた. 腫瘤陰影は2例に見られ, いずれも最初は肺癌が疑われた. 肺葉切除が22例, 肺摘除が8例で, 残存肺の膨張不全のための術後成形は22例に行った. 手術時間5時間以上が9例, 出血量が2000cc以上が18例であり, 術後合併症は20例に見られ気管支瘻膿胸が7例と最も多かった. 指数(1秒量/予測肺活量×100) 40以下は術前3例であったが術後は15例(62.5%)に見られた.
以上より, 肺アスペルギルス症, 特に菌球型の症例に対し外科療法は血痰喀血の治療として有効であるが, 大量出血, 気管支瘻膿胸などの合併症も多く, また術後の肺機能の低下も著しいことから慎重に行う必要がある. 切除に代わる安全な手術療法の開発と同時に副作用の少ない有効な抗真菌剤の開発が望まれる.
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© 一般社団法人国立医療学会
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