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肝細胞がん患者の血清GOT/GPT比の診断的意義について
荒木 英爾和田 佳子
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1991 年 45 巻 12 号 p. 1165-1169

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抄録
肝細胞がん(HCC)術前101例, 各病期のHCCと転移性肝がん175例, 健常者202名について紫外部吸収測定法(JSCC勧告法)に基づく血清GOT, GPT活性値から血清GOT/GPT比を求めた. 血清GOT/GPT比は, HCC患者1.07±0.50, 健常者1.50±0.43で, HCC群が低値を示した. 血清GOT/GPT比と, HCC腫瘤径との相関性は認められなかった. 慢性肝疾患患者において, 経過中に血清GOT/GPT比が全く変化しない例でもHCCの発症が臨床診断されることが例証された. HCC進行症例では, 特に死亡前に血清GOT/GPT比の著しい上昇を認めた.
HCCにおいて, 血清GOT/GPT比の上昇は重篤な病態の指標として意義あるものであるが, 慢性肝疾患からの発症を早期に診断する指標のひとつとすることは不適当であると考える.
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© 一般社団法人国立医療学会
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