医療
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Huntington舞踏病の1剖検例
―特にその精神症状についての臨床病理学的考察―
福谷 祐賢勝川 和彦渡辺 騏七郎
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1991 年 45 巻 2 号 p. 197-201

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抄録

Huntington舞踏病1剖検例を報告し, その精神症状の臨床病理学的関連について考察を試みた. 患者は38歳ころより四肢の舞踏運動と歩行障害が出現し, 6年後に抑制を欠き, 易怒的, 攻撃的になるなどの人格変化が出現し, さらに計算障害, 理解力の低下のほか, 失念, 思考過程の緩慢化, 意欲の低下などのいわゆる皮質下性痴呆の症状がみられた. 48歳時肺水腫のため死亡した. 神経病理学的には線条体の小型神経細胞の著しい脱落に伴う高度の萎縮がみられた. また, 特に前頭葉と後頭葉に目だつ大脳皮質の神経細胞の脱落と大脳白質の萎縮, 髄鞘の淡明化がみられた. 本例にみられた人格変化は線条体や前頭葉病変との関連が考えられ, 痴呆はいわゆる皮質下性痴呆の特徴を有していた. しかし, 痴呆の責任病巣は線条体病変ばかりでなく, 大脳皮質さらに大脳白質病変の関与も考慮すべきとおもわれた.

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