1992 年 46 巻 11 号 p. 907-911
糖尿病性足病変には, 神経障害と循環障害の両因子が関与している. 足症状を有する糖尿病10例にアルガトロバンを約4週間投与し, その効果を検討した. 患者は平均67.1歳, 平均罹病期間は12年である. 足潰瘍の1例は治癒, 疼痛は80%, 冷感は63%, 間激性跛行は75%に改善がみられた. TATの同薬投与前の平均は3.4±1.6mg/lと高く, 投与後低下傾向がみられたものの有意な変化ではなかった. 末梢循環の指標としての足および第一趾血圧指数は, 投与後上昇傾向を示し, 特に投与前に著明低値であった者に改善がみられ, 自覚症状の改善と一致していた. また, 振動覚, 運動神経NCVは, 各々81%, 75%に改善がみられ, 平均でも有意な改善を認めた. この間血糖のコントロールに変化はなく, 観察された効果は同薬の直接作用と考えられた.
以上, 糖尿病性足病変に対して, アルガトロバンは末梢循環改善効果とともに神経機能改善効果を示し, 治療上有用性が示唆された.