1994 年 48 巻 10 号 p. 870-877
症例1は39歳家婦. 22歳時, 両下肢の脱力感, 複視で発症し, 胸摘後13年に再燃した. 症例2は64歳男性. 57歳時, 両下肢の脱力感で発症し, 縦隔腫瘍(上皮性未分化癌)摘出術後, 症状は改善した. これら2例において, 抗Ach R抗体価は陽性で抗VGCC抗体は陰性, 神経反復刺激試験でLEMS型神経筋伝達障害を示した. 神経筋接合部微細構造の検索で, 症例1はMG型を, 症例2はLEMS型を示した. 2例において, 抗ch E剤と3, 4-di/4-aminopyridineはともに中等度の有効性を示し, 血漿交換療法も有効であった. 結語: 症例1においては, 形態学的検索よりMGと診断されLEMS型神経筋伝達障害の機序として, 抗ch E剤による神経筋伝達障害の改善よりAchの遊離をつかさどっている接前のAch Rの関与が想定された. 症例2においては, 自己免疫性LEMSの存在が示唆された. MGとLEMSのそれぞれの特徴を併せ持つ既報告例の検討より, これらの例の臨床病型と神経筋接合部の病態の多様性を指摘した.