抄録
大量の両側胸水がみられた結核性胸腹膜炎の1例を報告する. 症例は20歳女性, 約2週間前より発熱があり, 精査のため入院. 39℃台の発熱, CRP高値, 軽度のトランスアミナーゼの上昇とLDH, アルカリフォスファターゼの上昇がみられた. 抗生剤の静脈内投与を施行したが下熱せず, 入院第8病日には左胸水が出現した. 胸水は浸出液で, 細胞診, 好酸菌染色, 一般菌培養は陰性であった. CTスキャンでは腹水も認められ, 第13病日には胸水が増加, 胸腔ドレーンを留置した. さらに第16病日には右胸水も大量に貯留していたため右胸腔ドレーンも留置した. 左胸腔ドレーン挿入時, 胸膜生検を施行したが, ラングハンス型巨細胞が多数みられる類上皮肉芽腫と抗酸性に染色される桿菌が認められたことより結核性胸腹膜炎と診断した. 抗結核薬による治療により, 下熱, 胸水腹水の消失, 炎症所見の陰性化がみられた. 結核性胸腹膜炎の報告はまれであり, 1980年以後我々の調べた限りでは15例の報告をみるにすぎない. この中で両側の胸水貯留した例が1例あるが中等量であり, 本症例のように大量の胸水が両側に貯留した症例はみあたらなかった.