抄録
家族歴として長男(43歳)に尋常性乾癬, 乾癬性紅皮症を有する男性で, 68歳頃から全身性の皮疹に罹患し, 75歳時尋常性乾癬の診断を受けた. コルチコイド外用ならびに光化学(PUVA)療法, エトレチナート内服による加療中, 膿庖化を来し膿庖性乾癬への移行を疑われてさらに上記治療の強化が図られたが増悪の一途をたどり, 国立熊本病院皮膚科を紹介された. 顔面・頭部・掌蹠を除く全身の広い範囲に乾癬様の浸潤紅斑局面とその上に散在する微小膿庖を認め膿庖性乾癬と似通っていたが, MRSAを含む黄色ブドウ球菌とカンジダ, アスペルギルスなど真菌の混合感染による節腫症であり, 皮膚病理組織学的に乾癬の所見は認めなかった. 治療に用いられた外用コルチコイド剤が発症の誘発および増悪に主として働いたものと考えられた. 慢性に経過する乾癬を管理していく上ではこのような誤診を避けるため, 熟達した皮膚科学的診断力が要求される.