1996 年 50 巻 3 号 p. 221-223
乳腺adenolipomaの発生頻度はきわめてまれなもので, 全乳腺腫瘍の内0.08~0.16%に過ぎない. 今回, 我々は乳腺adenolipomaの1例を経験したので報告する. 症例は60歳の女性で, 主訴は乳房腫瘤であった. 右乳房C領域に境界明瞭な柔らかい, 3×1.5cm大の腫瘤を触知した. 乳房超音波検査では, 境界明瞭な内部エコーの不均一な腫瘤として描出された. 乳腺穿刺吸引細胞診ではclass Iであった. 局所麻酔下に腫瘤摘出術を施行したところ, 腫瘤は一見, 脂肪腫と思われたが, 割面では内部に白色調の顆粒状組織を認めた. 病理組織学的検索にて, 本腫瘤は脂肪腫成分内に散在性に腺腫成分を認めadenolipomaと診断された.