1996 年 50 巻 3 号 p. 224-227
口腔に発生するリンパ上皮性嚢胞はまれである. われわれは口腔粘膜に発生した本嚢胞の2例を経験したので報告した. 症例はともに女性で年齢がそれぞれ66歳と48歳, 主訴は舌下面の小腫瘤であった. 本嚢胞は口腔粘膜直下に存在し小腫瘤として観察された. 発生部位は舌小帯に隣接した舌下面で, 腫瘤の大きさはそれぞれ6×4, 5×5mm大であった. 腫瘤の色調は淡白色ないし黄白色を呈し, 自覚症状の訴えはみられなかった. 治療として保存的外科切除を行い, 観察した期間はそれぞれ3カ月と6カ月であったが再発はともに認めていない. 組織学的には, 重層扁平上皮で被覆された嚢胞壁に, この嚢胞を取り囲むようにリンパ組織が観察された. 嚢胞腔内には剥離細胞や角化変性物がみられた.