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造血器腫瘍患者における血中トブラマイシン濃度の測定と薬物動態理論に基づく投与設計の試み
篠 道弘冨澤 達田口 隆久中田 匡信勝俣 範之竹中 武昭
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1996 年 50 巻 6 号 p. 436-440

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抄録

造血器腫瘍患者へのトブラマイシン(TOB)投与に際して, 血中濃度を測定し薬物動態理論に基づく投与設計を試みた.
国立がんセンター中央病院に入院中の造血器腫瘍患者13名を対象とした. 血中TOB濃度の測定は, 蛍光偏光免疫法により行い, 患者の薬物動態値の算出および至適投与法の設定は, Sawchuk-Zaske法に準じて行った. すなわち, 3~15投与目の投与直前および直後の血中濃度を測定し(第1回観測点), 患者の薬物動態値を算出した. 続いて, 血中濃度が治療域内に達するように投与量と投与間隔を決定した. 投与法変更後にも同様の採血を行い(第2回観測点), 予測値と実測値を比較した.
第1回観測点のピーク濃度は4.47±1.15μg/ml(mean±SD)で, 71. 4%が治療域未満であった. トラフ濃度は0.40±0.28μg/m!で, 78.6%が治療域未満であった. 投与法変更後に血中濃度を測定し得た4クールのピーク濃度は8.34±0.74μg/mlであり, 全測定値が治療域内に到達していた. トラフ濃度は1例で治療域を上回ったが, 他は1.25±0.74μg/mlと治療域内にとどまった. なお, 投与設計前の投与量は2.87±1.12mg/kg/日であったが, 投与設計により5.29±0.47mg/kg/日に増量された.
血中TOB濃度は治療域に到達していない例が多く, 投与設計の必要性が示唆された.

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