1997 年 51 巻 5 号 p. 222-225
腸壁の水平方向の発育とは異なる急速な速度で深部浸潤を果し, 進行癌となったと考えられるIIa+IIc様の肉眼所見を呈した進行大腸癌の2例を経験したので文献的考察を加え報告した. 症例1は不定愁訴で, 症例2は大腸癌集団検診で大腸内視鏡検査をうけ, それぞれ直腸および上行結腸に径2cm以下のIIa+IIc様病変を指摘された. 腫瘤の硬い感じや可動性の乏しさから進行癌と診断された. 病理組織学的にはそれぞれ壁深達度はmpおよびss, 分化度は高分化および中~低分化腺癌であった. 深部への発育・進展の速度が, 腸壁の水平方向へのそれに比し著しく速い大腸癌の組織発生とそのような病変の初期像がどのようなものであるかを, 通常の緩徐な深部浸潤を示すものと対比しっっ, 明らかにすることが重要なことは言うまでもないが, 臨床の現場においては, 早期癌とともに予後の良いmp癌を多く含む径2cm以下の進行癌の発見に努めることも今後の課題であろう.