1997 年 51 巻 5 号 p. 215-221
女性の平均寿命の延長化は, 更年期および老年期婦人医療の重要性を増加せしめた. 現代日本人の更年期障害を分析したところ, 「のぼせ」などの単なるエストロゲン欠乏症状の出現のみならず, 全身倦怠, 肩こり, 腰痛, 精神症状など, 各年代の婦人にもみられる一般不定愁訴の増強症状が中心であることが判明した. かっ, これらの症状は更年期に特徴的な症状より生活障害度が強く, より治療に重点を置くべきであることが判明した. すなわち, HRT療法のみでなく, プロモクリプチン療法など, 自律神経失調症状への治療を重視すべきである.
骨粗鬆症は, 閉経期より予防的に治療を行う必要がある, 骨密度の測定は, 全身の骨の骨密度の平均を求めて行うことができない. 臨床的にはどの骨をどの方法で測定することが至適であるかなど, 診断方法に幾多の問題が残されている. DEXA法はより簡便にすべきであり, MD法は信頼性を増させるべきである. 超音波法にはデーターの再現性に問題が残されている. 骨粗鬆症の予防的治療は, やはりHRTが中心であり, これにVitamin D3誘導体などが加わろう.
更年期障害, 骨粗鬆症を中心に, 多施設に属する産婦人科医の観点からみた問題点を提起し, その解釈への糸口を報告する.