抄録
21歳, 女性に発生した進行盲腸癌の1治癒切除例を経験したので文献的考察を加え報告した. 主訴は腹痛とタール便で3年前より2, 3の医療機関を受診するも, 正しい診断を得ることはできなかった. 最近の知見によれば, 若年者大腸癌の予後の悪さは, これまでいわれたようなその生物学的悪性度の高さによるのではなく, 診断の遅れにより高度進行癌が多いためとされており, 若年者大腸癌においても早期発見, 早期治療に努めることが重要である.
近年, 大腸癌の組織発生の解明において, 目覚ましい進展を遂げる分子生物学的研究により, 若年者を含めた大腸癌の早期発見スクリーニングのマーカーが開発されることが望まれる.