1998 年 52 巻 11 号 p. 679-682
Duchenne型筋ジストロフィーでは航空機利用中機内圧低下とそれにともなう酸素分圧の低下により重篤な呼吸不全に陥る危険性がある. 今回4例の患者での航空機旅行の経験を報告する. このうち2例は睡眠時のみ人工呼吸実施中の患者であった. この2例の覚醒時の動脈血ガス分析では, それぞれ酸素分圧83.4, 83.1 mmHg,二酸化炭素分圧51.4, 56.9mmHgであった. 他の2例では酸素分圧, 二酸化炭素分圧とも正常範囲であった. 睡眠時人工呼吸実施中の2例を含む3例で飛行中の酸素飽和度の低下がパルスオキシメトリーで確認された. しかしいずれの症例でも臨床症状は認められなかった. このような筋ジストロフィー患者の航空機旅行に関しては酸素飽和度のモニタリング, また場合によってはアンビューバッグあるいは人工呼吸器による呼吸補助を考慮するなど充分な対策が必要である.