抄録
医療従事者は患者の血液や体液に接触する機会が多く, 血液の付着した注射針, 鋭利な器材(刀, 刃)による血液関連ウイルス感染が重要な問題となっている. 平成8年1月から平成9年12月までに当病院において発生した針刺傷事故(切創を含む)は58件(医師20件, 看護婦32件, 検査技師2件, 看護助手3件, 看護学生1名,) である. 針刺傷事故は5, 6月に多く発生し, 大部分は勤務5年以内の医療従事者 (43名: 72.4%)であった. 受傷部位は左手指37件(63.8%), 右手指19件(32.8%)であった. 受傷時間は午前中が36件(62.1%), 午後が22件(37.9%)であり, 原因器材は使用済み注射針のリキャップ16件(27.6%)以外特徴は認められなかった. 対象患者は男性26例(平均60.7歳), 女性24例(平均64.5歳), 小児3例(女児)である. また, 使用済み採血針の整理中の事故が5件あった. このうちHBs抗原陽性者は8/50例(16.0%), HCV抗体陽性者は26/46例(56.5%), どちらか一方が陽性である率は34/46例(73.9%)であったが, 医療従事者へのウイルス感染は認められなかった. 血液汚染事故の原因としては注射・採血針による刺傷事故が大部分を占め, 汚染部位として大部分が“手”である. 従って, 汚染事故の予防を考えると, この“手の事故”を中心に対策をたてる必要があると思われる.