抄録
pachydermoperiostosis (PDP)は皮膚肥厚, ばち状指, 骨膜性骨新生を3主徴とし多汗も認めるまれな遺伝性疾患である. 従来皮膚・骨格の形態異常に注目されていたが, 多汗と体温調節障害を主訴とした症例を経験した. 29歳男性, 25歳ごろから緊張すると手掌・足底・耳が多汗となった. 興奮すると容易に発熱し, 気温のわずかな上昇で極端に暑く感じる. 他の人は暑いのに自分は寒いことがある. 26歳ごろより頭皮が硬くなった. 顔面は粗造で畝状の頭皮肥厚, ばち状指趾, 皮膚軟化を認めた. X線写真では頭蓋・前腕・下腿骨に骨膜新生を認め骨皮質は肥厚していた. 本例は3主徴をともなう完全型と考えられる. PDPは結合組織の疾患であるが, 無汗や発汗過多, 温度調節障害を呈する他の自律神経障害の鑑別疾患としてあげる必要がある.