抄録
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は麻疹ウイルスによる遅発性ウイルス感染症の代表的な疾患である. 麻疹感染から数年の潜伏期間を経て発症し, とくに2歳未満の麻疹の感染にともなうことが多い. ウイルスは中枢神経に伝播し他の臓器には広がらない. 中枢神経を進行性に侵襲し, 予後不良の疾患である. SSPEの発症率は100万に一人といわれているが, ワクチンによる発症はきわめてまれとされている. 発症の機序はいまだ不明である. 明らかな免疫学的な異常はないが, 麻疹ウイルスに対する反応には異常が見られる. 神経細胞内の麻疹ウイルス膜抗原のM蛋白が欠損しているといわれている.
診断は臨床所見, 血清, 髄液の麻疹抗体価の上昇, 髄液のIg-Gの上昇, 脳波所見からなされる. 確実な治療法はないが, イノシンプラノベクス, インターフェロンの髄注, 脳室内投与が効果があると考えられている. 麻疹ワクチンの普及によりSSPEは減少しているが, わが国では現在でも年間数例が発症している. 本症の発症の予防にはワクチンの普及が重要である.