国民は国立病院に何を期待しているか?これは国立病院の存在理由に係る重大な問題であるが, これまで正面から取り上げられたことはなかった. しかし, 平成16年の独立行政法人化を控え, またバブル崩壊後のわが国の厳しい財政事情を考えた場合, この問題提起に対しては, 正面から取り組む必要があり, 避けて通ることはできない.
本シンポジウムでは, 医療を受ける側を代表して“ささえあい医療人権センターコムル”辻本好子氏, 民間病院を代表して医療法人財団河北総合病院理事長河北博文氏, をシンポジストに迎え, 厚生省と国立病院・療養所からは, 政策医療課長小田清一氏, 国立大阪病院長井上通敏氏, 国立療養所宮城病院長岩崎祐三氏および国立仙台病院長山内英生氏, にそれぞれの立場から意見を述べていただくこととした.
残念ながら, 立場上の制約もあって, この問いかけに正面から答えて下さったのは辻本さんのみで, あとはそれぞれの立場から, これまで行ってきたことの説明, および今後の提案と提言が中心となったが, 本シンポジウムでの問題提起は, 国立病院存在意義にかかわるものであり, 今後のきっかけを作る意味でも有意義であったと考える. この問題については, 今後, さらなる建設的意見と活発な議論を期待したい.
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