抄録
日本ではいまだにHIV感染者とエイズ発症者が年毎に増え続けている. とくに後者の増加は先進国としては異例のことであり, 対策の遅れが目立っている. その最大の原因は, HIV感染症に対する社会の無関心と, 抗体検査の普及の遅れである. マスコミを含めたさまざまな啓発活動の促進, 学校等における性感染症教育の充実, 保健所での自発的抗体検査体制の見直しなど課題が多いが, 医療機関の果たすべき役割も大きい. それはHIV感染症やエイズの見落としと誤診を少なくし, 患者教育を充実させる点である. 患者の予後改善・救命と感染拡大を防ぐには早期診断が重要である.