医療
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嚥下障害の外科的治療
田山 二朗
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2006 年 60 巻 4 号 p. 254-259

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抄録
嚥下障害において問題となるのは栄養摂取の障害と嚥下性肺炎である. 栄養摂取に対しては代替栄養法の発達によりある程度対応できるが, 嚥下性肺炎は代替栄養法においても生じる解決困難な問題であり, 生死にかかわる重篤な状況を引きおこす可能性を持つ.
多くの場合, 嚥下障害の対応は日常のケアーとリハビリテーションとなるが, 外科的治療も選択肢として存在することを認識すべきであろう. もちろん, (1)嚥下機能を評価し, (2)患者や家族の希望や目標を把握した上で, (3)適切な術式を決定することが大前提であり, 決して簡単な過程ではない. しかし, 嚥下障害の治療の流れにおいて, 外科的治療も基本的な知識である.
外科治療は, 障害された嚥下機能を補い, 誤嚥を消失(あるいは減弱)させ, 「経口摂取を可能にする」, いわゆる「嚥下機能改善手術」が理想ではあるが, この術式が適応となる症例は, 嚥下機能がある程度残存している症例に限られる. 高度な嚥下障害においては, 誤嚥を消失させ「嚥下性肺炎を回避する」目的が最優先されるため, あえて発声機能を犠牲にして「誤嚥防止術」として気道と食道の分離が行われる. いずれにしても, (1)呼吸(2)嚥下(3)発声の機能に対する十分な理解がその基礎に必要である. ここでは主な術式とその適応について, 実際の症例も紹介しつつ解説する.
嚥下障害は脳血管障害をはじめさまざまな疾患で引きおこされるため, 実際の患者数はかなりのものになるはずであるが, 多くは耳鼻咽喉科医の目にはふれず, われわれはこれらのほんの一部を扱うのみである. 手術により機能改善が期待できる症例や, 誤嚥にともなう肺炎を消失できる症例が存在することを認識し, 一度, 耳鼻咽喉科医の診察と意見を聞くことも必要であろう.
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© 一般社団法人国立医療学会
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