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地方の旧療養所型病院における小児救急医療への対応
和賀 忍吉武 克宏
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2006 年 60 巻 9 号 p. 550-554

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抄録

小児科医の不足が常態化する中で, 複数の小児科医が常在する旧療養所型病院も小児救急医療体制への参加が求められている. われわれは, 平成16年12月から, 8名の小児科医以外の医師(「一般医」)の当直担当日に, 4名の小児科医が待機することによる小児患者24時間受入れ体制を開始した. この体制前後の時間外小児患者受診件数は, 本体制開始前の平成16年1-8月と開始後の平成17年1-8月を比較すると, 1カ月あたり47.5±13.5件対144.8±40.4件(p=0.0117)で, 開始後に有意な増加をみた. 一方, 「一般医」当直時は21.3±29.5件対29.5±9.15件(p=0.1083)と有意な増加とはいえず, 「一般医」への負担は有意ではなかった. 入院になった患者数も有意な増加はみられなかった. 土・日・休祭日の日勤帯・夜勤帯における小児患者受診件数をみると, 土・日の日勤帯, 夜勤帯において患者数の増加をみた. 夜勤帯での患者数は日勤帯の3分の1から5分の1程度だった. 院内各部門の支援として, 薬剤科・看護部担当者1名が増員された. 報道機関の評価は住民の安心感, 信頼感をことさら前面に出したものであり, 体制を明示することによる反響の大きさがうかがわれた. 間接的な影響として, 一般小児科外来受診者数の増加がみられた. また, 小児科医のみならず「一般医」や看護師にとっては, これまでの療養所病院の限られた領域での診療で失われていた, 一般的な小児診療技術を回復するのにも効果があった. 今回の体制を開始してから1年後に隣接の津軽地域医療圏小児輪番制度が施行されたが, 二次病院として大きな抵抗なく参加できた. 総じて, 小児救急医療に対応した結果, 政策医療に特化することで閉鎖的な医療環境を作ってきた旧療養所型病院を活性化する効果をもたらしている.

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