抄録
重症心身障害児(者)は長期生存が可能となっている. 主治医が小児科医の場合, がんや成人病, 看取り等については小児科の医療のみでは及ばないこともある. 国立病院機構共同臨床研究および当院看護師に行ったアンケート調査から, 重症児(者)病棟主治医の現状と, 今後の在り方を考察した. 重症児(者)専任の医師がいる施設は38%であり, 小児科医が関わっている施設が80%だった. 主治医の人数は1から5人のことが多かった. 平均的な主治医像としては, 「1人あたり30-40人の重症児(者)を受け持つ(そのうち5人程度は超または準超重症児(者)). 多岐にわたる診療を行い, 月2-4回当直をしている医師」であった. 主治医の人数は現状と同数あるいは多い数が望まれたが, 一般診療を行いながら重症児(者)病棟の診療を行う主治医は多忙であることが示唆された. 今後関わって欲しい診療科として, 80%以上が小児科を挙げていた. 重症児(者)の主治医は, 1) 発達や変形・筋緊張異常, 耳鼻咽喉科や皮膚科の内容を含めた総合診療, 2) 福祉制度への精通, 3) 学校との連携, 療育への理解が必要と考えられるが, これらの知識および経験と, きめ細やかな診療からは, 現時点では小児科医が主治医として適任と考えられた. 一方, 今後関わって欲しい診療科として, 小児科以外では一般内科, 神経内科, 精神神経科が多く挙げられ, 小児科医が不足する現状では, これらの科の医師に段階的に主治医を移行するのも一法と考えられた. また, 小児科以外の医師に重症児(者)医療に積極的に関わってもらう必要があり, 臨床研修はそのよい機会である. 中でも, 1)一3)を研修できるプログラムの用意が必要と思われる.