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非定型奇形腫様・ラブドイド腫瘍の診断におけるfluorescence in situ hybridizationを用いた22番染色体長腕欠失検索の有用性
曽根 美智子岩井 艶子夫 敬憲中島 公平平生 三郎横田 一郎伊藤 道徳中川 義信
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2007 年 61 巻 7 号 p. 466-471

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抄録

非定型奇形腫様・ラブドイド腫瘍atypical teratoid/rhabdoid tumor (AT/RT)は中枢神経系胎児性腫瘍の中でもきわめて悪性の腫瘍である. 分子発病学的にAT/RTの発生には22番染色体長腕11.2 (22q11.2)領域にあるSMARCB1癌抑制遺伝子が関与することが知られている. AT/RTの腫瘍分類においてSMARCB1遺伝子の分子遺伝学的解析は重要であるが, 臨床検査としてSMARCB1遺伝子の突然変異を同定するのは困難である. そこで市販プローブ(DiGeorge/VCFS region probe:CYTOCELL社, LSI BCR/ABL probe:VYSIS社)を用い, SMARCB1遺伝子を含む22q11.2領域の検索を行った. プローブは近位マーカーとしてBCRTUPLE1, 遠位マーカーとして22qtelomereを使用した. 検査したのはAT/RTが疑われた中枢神経系胎児性腫瘍の4症例(AT/RT3例, 脈絡叢癌1例)である. 凍結標本を用いたfluorescence in situ hybridization (FISH)により, 4例すべてにおける22q11.2領域の欠失を迅速に検出した. 染色体検査で4例中2例の22番染色体長腕部分欠失と, 1例の22番染色体モノソミーを確認し, 他の染色体異常を認めなかった. FISHの結果は, SMARCB1遺伝子領域の欠失を示唆するものであった. SMARCB1遺伝子領域欠失を迅速に検索するために, 凍結標本を用いたFISHは臨床検査として有用と考えられた.

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© 一般社団法人国立医療学会
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