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先進医療としての子宮腺筋症核出術
西田 正人高野 克己新井 ゆう子小曽根 浩一市川 良太
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2008 年 62 巻 12 号 p. 655-661

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抄録

本来子宮腺筋症は経産婦に好発する疾患で, 従来は子宮摘出によって問題なく治療されてきた. しかしながら, わが国の女性の晩婚化や少産化を背景に, 妊孕性の温存を希望する性成熟期女性にも罹患する機会が増えている. 子宮腺筋症は激烈な月経痛を引きおこすため, 患者は妊孕性を犠牲にして子宮を摘出するか, 妊孕性を保って月経痛に耐えるかというジレンマに曝されることになる.
霞ヶ浦医療センターでは2002年からこのような患者を対象にした子宮腺筋症に対する新たな保存的手術を始め, 2005年10月に先進医療に指定されてから, 全国から患者が来院するようになった.
子宮腺筋症の保存的手術がこれまで不可能であった理由は, 腺筋症病巣が筋腫のように正常筋層と明瞭に区別して核出できないことにあった. われわれは, 病巣を指で触れて硬さで識別しながら高周波切除器を用いればその部分だけ切除できることを見いだし, さらに子宮奇形の形成術で培った技術を駆使して子宮を形成するという新しい術式を開発した.
手術症例は300例を超え, 十分な安全性を確保するとともに, 満足する術後成績を残すことができた. 今後, 術後妊娠率や再発率といった予後を反映させながら, 術式の改良と普及を目指してゆきたいと思っている.

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