医療
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筋萎縮性側索硬化症患者の人工呼吸器選択過程におけるソーシャルワーカーの役割
植竹 日奈
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2008 年 62 巻 2 号 p. 78-82

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抄録
筋萎縮性側索硬化症:amyotrophic Lateral sclerosis (ALS)による呼吸不全の進行にともなって侵襲式人工呼吸療法を選択するかどうかは患者にとって大きな岐路である. 生死を分ける決定を行うわけであるから, 患者や家族には医学的情報だけでなく, 生活全般にわたった情報提供が不可欠となり, 決定の過程には医師以外の複数の専門職が関わることが望ましい. 米国では, 事前指示やリビングウィルへの関わりは主にソーシャルワーカー(以下SWR)が行うなど方針決定にSWRが深く関わっているが, 日本では医師以外の職種が治療上の選択に関わることについてあまり認識されていない. 当院(中信松本病院)受診中に, 人工呼吸器を選択するか検討した23例を対象とし, 呼吸器選択の過程におけるSWRの関与を分析してみたところ23例中22例においてSWRが病名告知の席に加わり, 告知後の面接を行っていた. SWRによる面接で多くみられた場面は, 医療, 介護, 経済, 福祉など多分野にまたがった広範囲の情報提供, 医師に聞きにくい質問を仲介する, 治療方針や医学的知識に関わる説明をする, 家族面接などを構成する, カウンセリング的な対応をするなど, 医師のみでは対応が困難な場面も多くあった. 反面, 医学的知識に関わる質問も多く, SWRが決定の過程を支えるためには, 医学的情報はもちろん生活全般に関わる広範な内容について, 医師をはじめとした医療職とSWRとが十分に情報を共有し, 方針を確認した上で面接を行うことが重要である.
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© 一般社団法人国立医療学会
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