1990 年 3 巻 10 号 p. 311-317
有限個のGauss変数の一部を観測して残りを推定する問題に対し, 2値Hopfieldネットワークを最尤推定器として用いる方法の有効性について検討した.実数値をとる変数を複数の神経素子出力の和によって量子化表現し, ネットワークの「エネルギー」を尤度関数に対応させることにより「エネルギー最小化の性質」を利用できることが期待できる.このような推定機構は, 観測できる変数と観測できない変数の組み合わせが変わっても, 推定器としてのネットワークには何らの変更を要しない特徴ををもつが一般にHopfieldネットワークのエネルギーの最小点は唯一ではないという問題を伴う.この問題は単に変数の量子化表現が多対一であることのみによるものでないことを指摘したうえで, 十分多くの神経素子を用意すれば, どの極小点も近似的に尤度関数の最小値を与えられることを示す.