抄録
[目的]速度の異なる歩行と走行の際に生じるFree moment(以下,FM)の特性を明らかにし,床反力鉛直成分と比較すること.[対象と方法]健常な男女16名を対象とし,緩歩,自然歩行,速歩に加え,走行の4条件間でFM特性に差異があるかを比較した.さらにFMと床反力鉛直成分間の相関の有無を検証した.[結果]歩行では速度上昇にともなって足部外転に抵抗する向きのFMが大きくなる傾向がある一方で,走行では低値を示した.また,走行時のFM波形は歩行とは異なる特性が認められた.FMと床反力鉛直成分との間には,足部外転方向に抗するFMと床反力鉛直成分の積分値にのみ相関が認められた.[結語]歩行と走行ではFMは異なる推移を示した.走行におけるFMは,その方向性に着目する必要があることと,身体の運動特性による影響を受けることが示唆された.