国際ジェンダー学会誌
Online ISSN : 2434-0014
Print ISSN : 1348-7337
一人娘の就職から捉える現代中国女性のライフスタイルと親子関係
――浙江省紹興市の事例から――
陳 予茜
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2022 年 20 巻 p. 144-164

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抄録

中国の一人っ子政策のもとで生まれた一人娘は家族の「Only Hope」として,子どもの頃から親に教育を重視され,親から多くの投資を受けながら,高い学歴と条件のよい就職先を期待されている。しかし彼女たちは一旦社会に出ると,ほかの中国人女性と同様に女性というジェンダーによって労働市場で差別をうける恐れがあり,就職は必ずしも親子の期待通りになるとは限らない。本研究では一人娘の就業に関するインタビュー調査を通して,一人娘とその親が考える理想的な女性のライフスタイルと親子関係を考察した。その結果,一人娘本人もまたその親も,一人っ子かつ女性という娘の属性を自覚し,それにより娘が地元に戻って,公務員という「体制内」の職業に就くことを望んでいることが明らかになった。親子は共に仕事と家庭を両立させることのできる安定性の高い生活を女性の理想的なライフスタイルとして,そして親密で相互援助ができる親子関係を理想の親子関係として考えている。この点から,一人娘の就職は親子の理想を実現するための重要なイベントとして位置づけることができる。

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© 2022 国際ジェンダー学会
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