国際ジェンダー学会誌
Online ISSN : 2434-0014
Print ISSN : 1348-7337
特集1:デジタルテクノロジーとジェンダー、セクシュアリティ、親密性
日本のゲイアプリをめぐる多様な経験
砂川 秀樹
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2022 年 20 巻 p. 43-51

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抄録
位置情報を利用したゲイ/バイセクシュアル男性向け出会いアプリ(ゲイアプリ)は,世界中のゲイ/バイセクシュアル男性など男性同士の出会いを求める人たちのネットワークについて語る上で欠かせない存在となっている。しかし,日本における研究は非常に少なく,使用当事者の声はあまり聞かれていない。そこで,日本のゲイがどのようにゲイアプリを経験しているか,記述回答を中心とした57名のアンケート結果と筆者自身の自己省察から考察した。同質的な回答者の中でも,使用目的がセックスなどに集約されるわけではなく,評価も分かれ,ゲイアプリを通した経験は多様である。また,ゲイアプリ内のコミュニケーションやつながりは,アプリ空間に閉じられたものではなく,他の場や空間での新しい出会いや既存の関係も横断している。だが,多様な経験が示される中で,初めて使用した時の印象には,同様な表現が多数見られた。それは,「こんなにたくさんゲイがいる」というものだ。その驚きをもたらしたのは,近接性と写真つきのプロフィールによる匿名性の低さによる可視化だ。また,異性愛者と同性愛者の出会いの<遍>在/<偏>在の違いがあるからこそ,大きな驚きが生じたとも言えるだろう。ゲイアプリの影響が与えている意識や行動の変化を理解するためには,さらに多くの経験の聞き取りが必要である。
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© 2022 国際ジェンダー学会
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