2022 年 20 巻 p. 28-42
本稿では,現代日本における異性愛・婚活マッチングアプリの利用者像が,様々なメディアの言説を通じてどのように構築され,どのような役割を担ってきたかを,2021年,Covid19禍下,特に8 ~ 9月に掲載された記事に着目して検討する。読者のニーズに応じて様々な理想の女性像を提示してきた女性ファッションメディアにおいて,異性との恋愛・結婚マッチングアプリの利用者としての女性像がどのように構築されてきたかを,言説分析と構築主義の観点から考察した。その結果,様々な女性ファッションメディアにおいて,各種マッチングアプリを利用する際に想定される「リスク」を乗り越え,明確に結婚を望む女性像だけでなく,マッチングアプリの利用者として「恋活」「性活」といった多様な欲望を持ち,積極的・主体的にそれを実現する多様な女性像が形成されていることが明らかになった。このような理想像とは,一方でマッチングアプリ使用に伴う様々なリスクを乗り越え,自らの様々な欲望を実現するための装置と見ることができるが,他方で,読者もそれに倣って,「危険」とされることが多く,使用を躊躇する可能性を有する読者にマッチングアプリの使用/消費を促す装置にもなっているといえよう。