国際ジェンダー学会誌
Online ISSN : 2434-0014
Print ISSN : 1348-7337
特集1:デジタルテクノロジーとジェンダー、セクシュアリティ、親密性
データ・フェミニズム
ディグネイジオ キャサリン
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2022 年 20 巻 p. 8-17

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抄録
行政や企業のサービスにおけるデータ利用が進むにつれ,データ・サイエンティストにとって――また仕事でデータに頼る人々にとって――,その不平等な生産,応用の不均衡な方法,個人と集団への不平等な効果というものがますます無視できないものとなっている。だが,このような権力ゆえに次のような問いを立てる意味もある。すなわち誰による,誰のためのデータサイエンスなのか,誰の利益を念頭に置いたデータサイエンスなのか,という問いである。これらは筆者がデータ・フェミニズムと呼ぶもの,つまり過去数十年のインターセクショナルなフェミニズム運動と批判的思想に基きデータサイエンスとそのコミュニケーションについて考える方法から生まれた問いのいくつかである。本稿では,行動するデータ・フェミニズムを説明し,いかにして男/女の二分法への挑戦が他の垂直的な(かつ実証的に間違った)分類システムに挑む上で役に立つのかを示す。またいかにして感情の理解が効果的なデータ・ビジュアライゼーションについての考えを拡張することができるのか,いかにして見えざる労働の概念が自動化されたシステムが必要とする重要な人間の努力を露呈させることができるのか,なぜデータは決して「自明のもの」ではないのかについて論じる。本稿の目的は,データ・フェミニズムのプロジェクト同様,いかにして学術研究は行動に転換されうるのか,つまり,より倫理的で平等なデータの実践を想像するためには,いかにしてフェミニズム的な思考は操作可能であるか,そのモデルを呈示することである。
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© 2022 国際ジェンダー学会
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