国際ジェンダー学会誌
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Print ISSN : 1348-7337
特集:家事・ケアサービス,使う側の責任を考える―市場経済化に抗する運動の可能性―
植民地期香港における家事労働者と使用者のアクティヴィズム―境界管理のポリティクスに着目して―
大橋 史恵
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2023 年 21 巻 p. 34-61

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抄録
香港社会でフィリピン人家事労働者の受け入れが始まったのはイギリス植民地時代にあたる1970年代初頭である。それ以前の香港では中国大陸に出自をもつ女性たちが住み込みの家事労働者として働いていたが,輸出志向工業化によって経済発展が進むと,製造業に新たな職を得る女性たちが増加し,ローカルな家事労働者の雇用コストは上昇していった。夫婦共働きの中間層世帯が拡大するなかで,家事労働者の人手不足は深刻な社会問題としてとらえられていた。しかしこの時期の植民地期香港は,中国大陸とのリージョナルな境界の取り締まりを強化し,中国人家事労働者の香港への入境を避ける方針をとった。 フィリピン人家事労働者の受け入れは,このような「中国」と「外国」に対する境界管理のポリティクスを背景に開始されていった。植民地期香港の地方紙の報道記事や社説を読み解くと,こうした境界管理のポリティクスが生成した経緯とその後の展開が明らかになる。さらに1980年代になると,境界管理をめぐる香港政庁の方針は,使用者のアクティヴィズムとフィリピン人家事労働者らのアクティヴィズムの動向にも大きな影響をもたらしていった。 本稿はこうした歴史を批判的に振り返ることで,労働者と使用者とが連帯的な運動を実現するためにはどのような視座が必要なのかを確認していく。
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